四大陸選手権 ケヴィン・レイノルズ
だらだらとブログ更新をサボっている間に、
ケヴィン・レイノルズが四大陸選手権 優勝という快挙を遂げてしまった。
ナショナルの感想どころか、NHK杯と中国杯の感想すら書いていないのに……。
馬鹿馬鹿、私の馬鹿。 っていうのはこの際、棚にあげてしまおう。
「努力はいつか報われる」なんて、偽善者の戯言としか思わないですが。
「虚仮の一念、岩をも通す」ということわざは好きだ。
大雑把な意味は同じなんですけどねぇ。ニュアンスって大事。
そしてレイノルズは、愛すべき虚仮だ。
彼の第一印象は何度か書いた気もするが「バンド小僧」で、今でもその印象は残っていて、
細っこい体型とかスポーツ選手には珍しいちょっとハイセンスな感じとか、
その辺のイメージから来るものだと思っていたのですが。
バンド小僧こそ、虚仮の最たるものだと気が付いた。
食っていけないの覚悟で人生を費やすとか、打算的な私には考えられない。
だけど、だからこそ、そういう阿呆な人たちに憧れる。
二年前に書いた日記を思い出す。
もう相手のミスや棚ボタのメダルで構わないから、彼を勝たせてよ! 表彰台に上がる癖を今のうちにつけておかないと、ほんとに万年二番手の中堅どころから抜け出せない気がして。スポーツは詳しくないけど、モノゴトってそういう側面があるでしょう。収まった箱が不本意なものでもそこで長い時間を過ごすと、それが本来の箱になってしまう。その箱に見合った大きさに自分がなってしまう。
これは、2010年のスケートカナダで、SPで初めてクワドを2本成功させた選手として注目されて、
んでもFSでずっこけてメダルを逃して、その後のエリック杯でも4位だったときの感想だ。
あれから、2年。グランプリの銅メダルくらい手が届きそうで、なかなか届かなくて。
ジャンプは飛んでも飛んでも飛んでも、回転不足かすっぽ抜けで、安定しなかった。
基礎点10.50のクワドサルコウ、回転不足にGOE-3で、たったの4.40点とか。
ファンでさえ切なくなる点数を何度も何度も甘受して。
それでも必ずクワドを飛ぶ彼を、虚仮と言わずして何という。
けれど、本来持っているはずのポテンシャルよりだいぶ小さな箱が、
どんどんレイノルズの身体になじんでしまうようで、悲しかった。
四回転の称号とかよりも、とにかくメダルを取って欲しかった。
今シーズンは、めずらしくグランプリではなくオンドレイネペラ杯が緒戦だったので、
このB大会でメダルを取って、今度こそ飛躍するのだ!!と誰しもが、本人も、期していたはずの10月。
結果は4位。(1位は絶好調だった町田樹)
正直、打算的で性急な私はここで見限ってしまった。
ファンをやめた訳ではないけれども、別口で競泳選手に夢中だったせいもあるけれど
試合のたびに「今度こそ表彰台を!」という強い思いは減って、漫然と見守るようになったというか。
だから中国杯もNHK杯も感想を書かないままで平気でいられたのかな。
ああ、でも、NHK杯で仙台まで行って、会場の外で寒風に晒されながら
ドびっくりなFSの予定構成(クワド3本。ひとつは4-3-3)を見たときは、
全身の血が粟立ちました。あの衝撃は、なかなか忘れられないけれど。
そんな私が、今さら手のひらを返したようなことを書くのは面映いのだが。それでも
虚仮の一念が見事に岩を通した2013年2月9日(土)は、まさに至福の夜だった。
応援している選手がベストな演技をして優勝する、その瞬間に居合わせることのできた
幸福なファンは、果たしてどれほどいるんでしょうかね…?
あろうことか私は(国別を除けば)2回目の試合観戦にして、最高の瞬間に立ち合えた。
このラッキーだけは記録しておかなければ、このブログやってる甲斐が無いってもんですよ。
思い返すと、かなり取り乱していて恥ずかしい記録なのですが。
* * *
ショートでクワド2本とも回転不足だったレイノルズは、トップの羽生と約9点差の78.34点。
羽生と高橋の表彰台は堅いだろうから、SP2位のハン・ヤン、3位のドーンブッシュ、
FS冒頭のものすごい4-3から最後まで、迫力の演技で暫定トップに出たマックス・アーロンあたりを抑えられれば、
銅メダル!取れるかな〜〜?くらいの心づもりで迎えた、フリー最終グループ。
そもそも、四大陸のフリーで最終Gという事実が、ちょっぴり嬉しいわけです。本当にねえ。
レイノルズは、まだ、最終Gに居て当たり前の存在ではないから。
[滑走順]
18:リチャード・ドーンブッシュ[米国]
19:羽生結弦[日本]
20:ハン・ヤン[中国]
21:ケヴィン・レイノルズ[カナダ]
22:高橋大輔[日本]
23:ナン・ソン[中国]
ドーンブッシュも羽生も案外と点が伸びず、うん、この辺まではわりと冷静に見ていたつもりですが。
続くハン・ヤンが4Tで転倒したのを見たら、心の中で天使と悪魔が騒ぎ出す。
「次も転んで!」「なんてこと考えるの」「ジャンプ抜けろ」「いや、だから何てことを…」と煩悶するうちに
ハン・ヤンは終わってしまって、演技の記憶はあいまいだが、FS 150.14。羽生に次ぐ暫定2位。
こ、ここここここ、こ れ は … !? うーーーん。
レイノルズが、175.94を出したカナダナショナルの神演技を再現できれば、
ISUの大会ってことを差し引いて160点くらいだったとしても、銅は取れる!!と思う。たぶん。
と目算したとたんに心拍数が一気に跳ね上がり、そしてレイノルズ。
いつもは、比較的あっさりとスタート地点に立つ彼が
今回やけに時間いっぱい周回して、集中力を練り上げている(ように見えた)。
出だしの荒ぶる鷹の上半身ポーズも、伸ばした両腕の先まで気合いに満ちている(ように思えた)。
ジャンプ体勢に入るごとに、私の心臓は潰れそうになる。こんなに消耗した観戦はもちろん初めて。
4S…きれい!、4T+3T…完璧!、3Aの神様お願いします!…よっしゃー!3A+3T!
前半のジャンプが終わった時点でなんだか気分が悪くなってきて(たぶん、きちんと呼吸していなかった気が)
美しいステップが救心剤のようだった。
ハン・ヤンの次だからSSとかスピードの差が目立っちゃうね、なーーんて声を事前に聞いていたけれど
いやいやどうして、動作にジュニア臭の残るハン・ヤンの次だったからこそ、
優雅に動く手足の、その先に広がる空間まで、さらに際立って美しく見えた。
バレエレッスンの効果が出ているなぁ、巧くなったなぁ……と、しみじみ。
比べれば、確かにスピードはないけれども、ゆったりしたスケートだってこんなにも美しいではないかと。
速さばかりを一律で競わなくたっていいじゃないか、と。思いながら後半に突入。
神様お願いします4T…よし!!、2A…よし!、3F…あれ?コンボは…?、3Lz…ちょっと危なかったけどオッケー!
3S+3Lo よっしゃーー!!ここでコンボ!意地でもコンボ券は使い切る!
(↑あとでプロトコル見るまでセカンド3Loだと思っていた。実際は2Lo)
SPでもそうだったけれど、演技中ずっと会場全体に暖かい手拍子が起こっていて、
もはや日本はケヴィンの第二のホームグラウンドだねえ、などと感慨深かったのだが
最後のスピンに入る前、ピアノの旋律が叩き付けるように激しくなって(ここで私の涙腺崩壊)→ スピン
→手拍子が拍手に変わって→そのまま大歓声に包まれてフィニッシュ。
カナダナショナルに続いて2度目の、右手を大きく突き上げたガッツポーズ!
会場ほぼ全員がスタンディングオベーション!
この、最後のスピンからスタオベまでが、間違いなく今回の男子フリーで最高潮に盛り上がった瞬間だった。
ケヴィンの演技に、会場が揺れるほど沸いているよ……嬉泣! こんな光景、初めてだよ。
その大歓声に、日本の人気選手たちに向けられるような黄色い色が混じっていないことが、ひそかに嬉しかった。
ほぼ2年近くの間、飛んでも飛んでも回転不足をとられて、それでも高難度構成に挑戦し続けてきた選手にふさわしい、
演技への純粋なリスペクトに満ちていて、とてもとても嬉しかった。
レイノルズの演技が終わった時点で、メダルとか実はもうどうでもよくなって。
神演技を目の当たりにした感謝と満足感で、すでに私は幸せだった。
ハン・ヤンのときのドス黒い感情はどこへやら、彼が報われる点が出ればいいなと聖母のような心持ちだった。
それに「これだけ完璧な演技なんだから、さあ来い高得点!」と自信を持てないのがレイノルズなわけで。
点数が出たら「回転不足で4Tがたったの3点!てへぺろ〜」とか、べつに通常営業ですし想定内ですし…泣。
実際、今回は点数の出方がシビアに思えた(ミスをしたとはいえあの羽生様のFSが158.73。低い)
……で。 得点。 まさかの、 172.21。 いや、当然と言えば当然なのだけど、
ファンであるほど、これまでの彼の成績を知っている人ほど、まさかの!と思ったのではないかしら。
この数字ならクワドは認定されたのだろう。PCSもけっこうもらえたのだろう。羽生を破って、まさかの暫定トップ……。
残りは2人、高橋大輔とナン・ソンで、つまりはメダル確定。……ていうか、もしかして、まさかの銀メダル? え??
ここでまた、一気に煩悩が膨れ上がったわけだ。
高橋大輔の演技中だというのに、最終滑走のナン・ソンの神演技の確率(ひいては銀メダルの確率)とか
もしナン・ソンに抜かれて銅メダルだったとしても、2010年、オリンピック前のガラ空き四大陸で
かすめ取った銅とは意味合いがまったく違うよね、とか考えてしまって、
高橋の演技は何一つ覚えていない。終わってから、高橋はどこでミスったのか、
4Tで詰まったとかアクセルで転んだとか教えてもらったけれど、自分では見た記憶がない。
どういうわけだか(演技見てないから分からない)高橋大輔 140.15。この時点で6位。
「狐につままれた」という表現を、身をもって体験しましたね。会場全体で。
一瞬、時が止まったような、ちょっと不思議な空間だった。
会場の大半はおそらく高橋が表彰台を逃した事実が理解できなくて。
そして私は、降って湧いたレイノルズ優勝の可能性が理解できなくて。
最終滑走のナン・ソンが滑っている間もずっと、え?え??ええええ?と思考停止状態で、
これまた演技の記憶がない。いいの。あとで落ち着いてから録画で見るから。
最終的にナン・ソンが6位で(高橋は7位)、レイノルズ初優勝が確定して、
でも、これっぽっちも現実感が湧かず、ぼんやりしていたら、キスクラで勝利者インタビュー。
「最高の演技ができて、I'm very very happy !! 」
「SPのクワドが回転不足だったので、今日は朝の練習でしっかり確認しながら調整した」とか何とか。
最後に日本のファンへメッセージをどうぞ↓
「皆サン、今日ハ来てクレタ。見てクレタ。ありがとうございマシタ」っていきなり日本語!!ひゃーー。
それにしても、回転不足ってそんな簡単に調整できるなら、今まで何故…!と思ったけれど、
今までの苦労があり、最近の好調があって、ついでに新しい靴の調子も良くて、その結果の今日だったのだろう。
暗闇に浮かぶ表彰台の中央に立ったレイノルズの金髪が眩しくて(左右が黒髪の羽生とハン・ヤンだったので余計に)。
私の席からだと、揚がっていくカナダ国旗がスポットライトの逆光を浴びて、めちゃくちゃ神々しくて。
パトリック・チャンではなく、レイノルズのために流れるカナダ国歌が心に滲みた。
会場のスクリーンに大映しされたレイノルズは一生懸命に涙をこらえていて、
あああああああああ本当に本当に、良かったねえ! 長い道のりでしたね!
ケヴィン、優勝おめでとう。
* * *
今回、レイノルズは運も味方につけていた。
実のところ、彼はけっこうな強運の持ち主だと信じているのだが、
今までは補欠から(世界選手権に2度も)繰上げ出場という形で使ってしまっていて、
やっと、勝敗を左右する部分で運を生かせた気がする。
高橋大輔の点数が出たときの摩訶不思議な感覚は、運命の女神に笑われているようだったもの。
帰宅して、録画で見たフリーのキスクラ席、最初は喜んでいたレイノルズが
点数が出る瞬間に、祈るような表情になっていたのが、また泣けた。
これからは、ガッツポーズが出るような演技のキスクラでは、堂々とふんぞり返って点数を待つといいよ。
(ふんぞり返るケヴィン、想像がつきませんが。苦笑)
つらそうな顔は、もう十分過ぎるほど見てきたから、
この後はずっと笑顔の試合が続けばいいと……願ってやみません。
とりとめのない長文を、最後まで読んでくださった方に感謝をこめて。
四大陸フィギュアスケート選手権 2013 男子結果
1 Kevin REYNOLDS CAN 250.55 SP:6(78.34) FS:1(172.21)
2 Yuzuru HANYU JPN 246.38 SP:1(87.65) FS:3(158.73)
3 Han YAN CHN 235.22 SP:2(85.08) FS:5(150.14)
4 Max AARON USA 234.65 SP:10(72.46) FS:2(162.19)
5 Richard DORNBUSH USA 234.04 SP:3(83.01) FS:4(151.03)
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ISU 四大陸フィギュアスケート選手権 2013
◆大阪市中央体育館(地下鉄中央線 朝潮橋駅 徒歩5分)
◆2013年2月
8日(金) ショートダンス 13:20〜、ペアSP 16:00〜、オープニングセレモニー 18:00〜、男子SP 18:30〜
9日(土) 女子SP 13:40〜、男子FS 17:55〜、男子表彰式 22:05〜
◆チケット:8日(金) スタンドA/8,000円、9日(土) アリーナSS/20,000円
◆座席:スタンドAは新横の3階席ていどの俯瞰。すぐ下のブロックが選手席でおいしいといえば、おいしかった。
アリーナSSはロングの5列目。中央やや左手のジャンプスポット。
◆気温:暑い。外の方が寒かった。アリーナ席でも着てきたコートのみでOK(時々脱いだ)
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